紀伊半島の環境保と地域持続性ネットワーク 紀伊・環境保全&持続性研究所
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  ゴルフ場における農薬使用と害虫の種類

1.ゴルフ場における農薬使用

 ゴルフ場は、多くの場合に水源を涵養している自然豊かな丘陵地帯を切り開いて造成されています。その地域で広大な面積を占めることの多いゴルフ場での芝生や樹木の病害虫、雑草の管理に、多くの農薬が使用されています。かつて、ゴルフ場からの排水に含まれる農薬が社会的に問題となり、千葉県などでは新規に開発されるゴルフ場での化学農薬の使用が禁止されるということがありました。このようなことから、ゴルフ場での農薬使用が、周辺環境や野生生物、河川の水質、農業・水産業に悪影響を及ぼさないように監視していくことが必要となりました。

 
環境省は、平成2年に、ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁を防止するために、ゴルフ場で使用される農薬について、水質調査の方法や、ゴルフ場の排水口から排出される農薬の濃度目標(指針値)等を定めました。
 
この目標値を定めた「ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁の防止に係る暫定指導指針」(以下「暫定指導指針」という。)に基づいて、各都道府県は所要の調査、指導を行っています。環境省は、毎年、都道府県から水質調査結果を求めるとともに、平成16年度からは環境省地方環境対策調査官事務所でも水質調査を実施し、それらの結果を公表しています。

 
これまでの結果で、指針値を超過したのは、平成8年度に約10万3千検体中1検体、9年度に約12万1千検体中5検体、10年度に約11万3千検体中2検体、12年度に約8万4千検体中2検体、14年度に約8万検体中1検体で、その他の年度は平成17年度を含めて、超過検体はゼロでした。指針値を超過した11検体の内訳は、殺虫剤が6検体、殺菌剤が1検体、除草剤が4件でした。これらの調査結果からみると、調査がかなりよく行われていることもあり、指針値を超える検体数の数は年々減少する傾向にあり、ゴルフ場での農薬管理はかなりよく行われるようになってきたことが伺われます。しかし、ゴルフ場の排水から検体を採取する時期が、農薬散布時期に行っているのかどうか、必ずしも明確ではありません。

環境省ホームページ: ゴルフ場暫定指導指針対象農薬に係る水質調査結果

 
しかし、上記の平成17年度の調査結果でみると、調査されたゴルフ場数が全国833箇所で全国のゴルフ場数(2320箇所:(東京ゴルフリサーチ調査)の約38%であること、調査対象の農薬数が殺虫剤、殺菌剤、除草剤で合計45種類に限られていることなどの問題もあります。

 
ゴルフ場における農薬の使用については、環境省がゴルフ場で使用される農薬が排出されて河川などの水質汚濁を防止するために、「農薬登録保留基準値及び公定分析方法等」を定めています。この中で、殺虫剤10種類、殺菌剤18種類、除草剤17種類について、排出水中の濃度の指針値(基準値)が定められています。しかし、ゴルフ場で使用される農薬は、農薬取締法で規定する「農薬」(農作物を害する菌、線虫、ダニ、昆虫、ネズミその他の動植物又はウイルスの防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤)に該当しないので、環境省の「農薬登録保留基準値」が定められている農薬以外の農薬を、いくら使っても調査には引っかからないという問題があります。
 
 ところで、芝の生産は農業であるので、登録農薬以外は使用することができません。そこで、芝に登録のある化学合成殺虫剤を検索してみると有効成分数で31種類、殺菌剤は有効成分数で12種類(農林水産消費安全技術センター・ホームページで検索)であることが分かります(2007年3月19日現在)。したがって、ゴルフ場で使われている殺虫剤の種類は、「農薬登録保留基準値」で取り上げられている種類数をかなり上回っていることになります。従って、「農薬登録保留基準値」が決められていない芝生の病害虫や雑草の防除に使用される農薬についても、新規農薬や保留基準値未決定の農薬の使用状況に合わせて、迅速に保留基準値を決めていく必要があります。

2.ゴルフ場の害虫の種類

農薬は、主に芝生の病害虫管理に使用されますが、ここでは、まず、芝生の害虫の種類を挙げてみます。

チョウ目
スジキリヨトウ、シバツトガ、タマナガヤ、クシナシスジキリヨトウ、シロナヨトウ、アカフツヅリガ
甲虫目
コガネムシ類(セマダラコガネ、ヒメコガネ、マメコガネ、ウスチャコガネ、ドウガネブイブイ、コフキコガネ、チビサクラコガネ、オオサカスジコガネ、アシナガコガネ、コイチャコガネ、ヒラタアオコガネ)、シバオサゾウムシ
バッタ目
ケラ
カメムシ目チガヤシロオカイガラムシ、スナコバネナガカメムシ
センチュウ類
シバネコブセンチュウ
その他
ミミズ(糞塚形成)、モグラ 

3.ゴルフ場での殺虫剤使用の低減策

 芝生害虫を防除において、化学合成農薬の使用量を削減していくための方法について箇条書きしてみました。今後、その内容について述べていく予定です。
 1)的確な発生害虫の診断同定
 2)早期発見に基づく早期対策
 3)発生予測に基づく適期防除
 4)人に無毒ないし低毒性の農薬の使用
 5)スジキリヨトウ、シバツトガ用の複合交信かく乱剤の使用
 6)生物農薬(BT剤、スタイナーネマ・グラセライ剤など)の使用

 
7)「農薬登録保留基準値」のある農薬の使用


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